前回まで、政府の子育て支援への取り組みを見てきましたが、では、さらにどのような取り組みがあれば、安心して希望通りに子どもを持とうと思えるのでしょうか。
下図は、国・自治体の取組・支援について、20~50歳代の男女に対し、経済的な事柄に特化して、どのようなことがあれば、皆が安心して希望どおり子供を持てるようになると思うかという質問に対する調査結果です。
図1:安心して希望どおりの子供を持つための条件
出典:少子化社会対策白書(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01webhonpen/html/b1_s1-1-6.html)
条件とされている項目が限られているため一概には言えませんが、「教育費」「医療費」に対するポイントが高いです。
「幼稚園・保育所などの費用の補助」に関しては、本アンケート年度の途中で「幼児教育・保育の無償化」がスタートされたので、再度アンケート調査を行うと変化がみられる項目でしょう。
また、「高等教育までを視野に入れた将来の教育費に対する補助」についても、高校については、本アンケートの翌年度から国公立だけでなく私立高校の授業料実質無償化も実現されています。
さらに、同じく大学等の高等教育についても、本アンケートの翌年度から、高等教育の修学支援新制度が開始されました。ただ、高等教育の就学支援新制度は、高校までの制度と比較して、対象となる所得制限がだいぶ厳しくなるため、調査結果のポイント低減に反映されるまでとはいかない可能性が高いでしょう。
そして、教育費に対する支援は、基本的に学費がメインです。
しかし、制服や学用品、学校施設費や部活・塾などの学校外活動など、学費以外にかかる費用は思った以上にあります。
また、前回も書きましたが、進路によっては一旦費用を納めてから還付されることもあり、一時的に大きなお金が必要となる場合もあります。
教育費に対する支援の充実は、まだまだ課題と言えるのではないでしょうか。
そして、医療費ですが、「妊娠・出産に伴う医療費の補助」が調査結果の第二位になっています。
数字の内訳は不明ですが、妊娠・出産で思い浮かぶのは不妊治療ではないでしょうか。
高度不妊治療(体外受精・顕微授精)にかかる費用は、1回あたり20~60万円と表示されている病院が多く、トータルの平均金額としては約193万円という調査結果(出典:妊活ボイス(https://www.ninkatsu-voice.jp/))もあります。
こちらについても、令和3年1月から政府の不妊に悩む方への特定治療支援事業が拡充され、所得制限の撤廃や助成額・女性回数が見直されました。
さらに、今後は公的医療保険を適用する方向性を示しています。希望通りの子どもを持つことへの安心感の向上につながる制度となることが期待されます。
図2:結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現に向かっているか
出典:少子化社会対策白書(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01webhonpen/html/b1_s1-1-6.html)
本テーマの最後に、「結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現に向かっているか」というアンケート項目があります。
「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が45.2%で、半数に満たない結果となっています。
探すと様々な子育て支援に対する政策がありますが、それらが周知されていなかったり、現場の希望に沿っていない・沿っていても足りていないと感じることがあります。
よりリアルな声が反映された制度が実現され、結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会が実現されることを願います。