前回は、予定子供数が理想子供数を下回る初婚同士の夫婦を対象にした、『妻の年齢別にみた、理想の子供数を持たない理由』として、子育てや教育に対する経済的な不安をデータから目の当たりにしました。
お金がかかるのであれば、働いて稼げば…となるかもしれませんが、現状はどうでしょうか。
下図は、第1子出生年別にみた、第1子出産前後の妻の就業変化です。
育児休業利用率が上昇傾向にあるとはいえ、第1子出生後も就業を継続している割合は4割にも満たない状況です。
第1子の段階でこの状況であれば、第2子となるとさらに継続が困難になると考えられます。
図1:第1子出生年別にみた、第1子出産前後の妻の就業変化
出典:少子化社会対策白書(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01webhonpen/html/b1_s1-1-5.html)
なお、下図は、末子妊娠・出産を機に退職した理由のデータです。
その中で、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」と回答した人に対するその理由のデータもあります。
図2:末子妊娠・出産を機に退職した理由
出典:少子化社会対策白書(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01webhonpen/html/b1_s1-1-5.html)
正社員の方のデータで、「勤務時間があいそうもなかった」と「自分の体力がもたなそうだった」という理由が高いですが、平成28年社会生活基本調査(※)によると、独身期の女性35歳未満の平均通勤時間が51分、35~44歳の平均通勤時間が45分です。
また、子のいない妻の35歳未満の平均通勤時間が30分、35~44歳の平均通勤時間が31分、子育て期の妻の平均通勤時間は23分でした。
それに対し、上記すべての期において、男性の平均通勤時間は50~60分とのことです。
※出典:平成28年社会生活基本調査(総務省統計局)(http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/gaiyou.html)
図1と、この平均通期時間のデータより、女性は結婚や出産をきっかけに通勤時間がかからない職場へと変わっている可能性があるのではないでしょうか。
そして、「勤務時間があいそうもなかった」と「自分の体力がもたなそうだった」という理由にもつながるのではないでしょうか。
前回の記事で、義務教育前後にかかる教育費への対策について言及しましたが、現状、高校や大学の学費への支援策はあるにはあります。
しかし、対象が学費のみに対してだったり、所得によったりもしますし、支援のタイミングも一旦、現金で費用を納めて後日支給という支援が多く、「教育にはお金がかかる」という印象はぬぐえません。
そして、共働きを基本とするには、保育所の待機問題や男性の育児休業なども必要ではありますが、きょうだいで通う保育所が別々になってしまったり、自宅とも職場とも遠い場所になってしまったりすることもあります。また、男性の育児休業の期間も課題でしょう。
このような環境が、現職を続けていくにあたって、勤務時間や体力の問題へとつながるのではないでしょうか。
制度がある、人数的にはカバーできているなどという状況だけではなく、現実的に使い勝手のよい少子化対策がさらに検討されることを願います。
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