前3回にわたって日本と諸外国の出生率を見比べてきましたが、今回はアジア各国との比較を見ていきましょう。
下図は、経済成長が著しく、時系列データの利用が可能なシンガポール、韓国、香港及び台湾の合計特殊出生率の推移です。
図1:諸外国・地域の合計特殊出生率の動き(アジア)
出典:少子化社会対策白書(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01webhonpen/html/b1_s1-1-2.html)
1970年の時点では、どの国・地域の合計特殊出生率も日本を大きく上回っていましたが、その後、低下傾向となり、現在では日本を下回っています。
なお、上図にはありませんが、韓国では、2018年の合計特殊出生率は0.98となっており、データがある1970年以来初めて1を割り込んでいます。
韓国やシンガポールなどアジア各国では、過去に政策として家族計画における人口抑制が行われていた歴史があり、少子化に影響が出ていると考えられます。
また、アジア圏では、婚外出産が少ないことや未婚化・晩婚化が出生率変化の要素となっていると言われています。
下図は、韓国も含めた家族関係社会支出の対GDP比のグラフです。
前回、「社会保障の面から日本と諸外国の出生率について考える。~その3~」で欧米の諸外国との比較を行い、日本の家族関係社会支出が欧州に比較して割合の低さが浮き彫りとなりました。
図2:各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較(2011年)
出典:少子化社会対策大綱の具体化に向けた結婚・子育て支援の重点的取組に関する検討会(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/shien/k_1/gijishidai.html)
少子化傾向を受けて、アジア諸国でも少子化対策が行われつつありますが、このようなデータを見ると、まだまだこれからという状態でしょう。
アジア諸国に比べると、合計特殊出生率も少し高く、家族関係社会支出も努力されているように感じるかもしれませんが、合計特殊出生率が人口置換水準(人口が増加も減少もしない均衡した状態となる合計特殊出生率のこと)を下回っている今、出生率を持ち直している欧州諸国などを参考に、効果的な対策を打ち出していく必要があるのではないでしょうか。
日本は子供を生みやすい国だろうか?-
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